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にらどんは一杯500円。尚、出前は承っておりません。ご了承下さい。

ノエルのメソッド

Vジャンプ買うついでに文庫を3冊も買ってしまった。
なんか今日は惹かれるものが多かった。これから芥川読むところなのに。


というわけでずっと語りたかった「天体のメソッド」の構成の話。
消極的にネタバレをすると思うので未視聴の場合は読まないほうがいい。
さて、一口に言えば日常から浮いた不思議+美少女がわーきゃーするという普通のお話なのですが、
それだけでは言い表せない構成の妙が集約されているというのが今回のネタ。
何から話せばいいのか悩むところだけど、まずはノエルからでいいのかな。この話のキーですし。
序盤から険悪ムードが続く上に円盤の謎、乃々香達の過去などがあまり明かされないまま進行し、
視聴脱落必至と思われたこの作品の清涼剤、それがノエルというマスコット。
これが本当に可愛く描かれているのは言うまでもないんだけど、その登場タイミングなんかも秀逸。
辛い場面の後にはノエルがきちんと乃々香と視聴者を励ましてくれる。「ノエルのためだけに見ている」なんて人も多かったはず。
とりあえずキャラ別でいいか。実質章立てになってるし。
じゃあ次は主人公の乃々香。とは言うけども、視聴者が感情移入するためのキャラではなくて、物語を進めるための装置なんだよね。
そういう割り切りを非常に感じるキャラだった。悪い意味ではなく。
優しく、行動力があり、自分の意思を持ち、それを実現するだけの能力もしっかり持ったスーパーマン型の主人公。
乃々香が自分の意思で行動することで物語が進んでいく。
それが終始徹底されることで物語が停滞することがなかったんだよね。そういう意味ではやはりこの作品の立役者。
最近の苦悩型にはない爽快感があった、と同時にどこか遠く感じる面もあったのも事実ではある。
続いてプロ市民ちゃんこと柚季。このキャラこそが序盤の暗黒面であり、
序盤は"円盤"を、その後は終盤へ向けて"天文台の5人"を意識させるためのキャラ。
まず視聴者および乃々香はこの話の肝となる円盤と向き合う必要がある。
この過剰な円盤反対運動によりまず世界観を説明し、更に乃々香と4人の相関図を浮き上がらせる。
ただの不快なキャラと切り捨てるなどというのはもってのほか。
まぁ振り返ってみて驚かされるのはこの険悪期がわずか5話で終わっているということだ。なんと長い5話に感じたことだろう。
その後は乃々香の幼馴染としてよりを戻すことで、「もう一度5人で」という乃々香の動機を裏付ける要素となっている。
ラスボスかヒロインかとさまざまな推測が飛び交った汐音は結局ヒロインに落ち着いた。
最初に出てきて陰鬱ムードの幕開けをもたらしたにも関わらず柚季編が終わるまでほぼ放置され、汐音編が始まるのは7話である。
その確執は柚季の比ではなく、閉塞的な態度も一層それを感じさせる。ヘッドホンの暗喩が綺麗にはまってて美しい。
といってもスーパー乃々香が当然こじ開けてくれるんですけどね。そういう安心感はあった。
他の3人と違いノエルと親交があるという点でやはり役割を与えられたキャラクター。
また乃々香への思いもしっかりとシナリオされて、それによって乃々香の掘り下げも同時に行った。
その割りに2話で和解。拍子抜けの感はなく、思いの裏返しだったというのがすとんと落ちてくる理由付けでむしろ最良のオチだった。
そしてここから、ここからなんですよ天体のメソッドは。
和解したその話の中で汐音が手のひら返ししての引き。8話から始まるのが天体のメソッドなんですよ。
ここからのノエル編こそが本編であり、そこまではプロローグに過ぎない。
今までずっと癒しとして存在したノエルがいなくなってしまう。ここで初めて乃々香と視聴者の視点が一致するわけです。
ノエルを失ってはいけない。ノエルを取り戻す。ラスト5話のこのシンクロナイズのための作品。
これこそが僕が秀逸と叫ばずにはいられない構成の妙。
スーパーマン型主人公の遠さ、5人が揃うことの意義、円盤の謎、こういったものが全て全て一致して、作品の、視聴者の全身全霊がノエルに集約する。
序盤から計算しつくされたこの展開に唸らずにはいられない。
お話が面白いとかそういうのとは別。これについては話としても面白かったけども。
計算された美しさにただただ賛辞を送るしかない。やられたと言って満更でもない顔をするしかない。
でもってキレーに13話にまとめきった。8話から一切減速せずに走り抜けた。
幼馴染5人のうち2人が設定と舞台回しのためだけのキャラとして省かれてるのも13話にしっかり収めるための工夫ですね。
1つ1つのパーツがそれぞれ使い捨てにされずにあるべくしてある、使われるべくして使われる。合理性というか必然性というか。
とにかくこのノエル編とそこまでの溜めが美しすぎて'14年の最優秀構成賞を与えたい。
オリジナルアニメの良さってこういう所ですよね。1クールという期間でいかに美しい起承転結を描くか。
原作付きだとどうしても収めきれなくなって、ギャグ・日常以外で面白いものは作りにくい。
いやホント、ギャグ以外で1クールの構成にここまで感動したのって始めてじゃないか。


いやー書いた書いた。2時間ぐらいかかっちゃったぜ。
本筋にあまり関係なかったから省いたけどOPEDが両方素晴らしいのもよかった。入りが毎回いいし曲・映像ともに非常にハイレベル。